ボヨヨンな人
このように書いてくると、うちの会社の社員や、派遣社員として出会った方々は本当に良い方が多く、恵まれた環境なんだなぁと改めて思うのですが、中には「おやおや?」という方も当然いらっしゃいましたので、そんなエピソードもちょっと書いてみたいと思います。
その人はやはり産休要員という事でいらした派遣社員でしたが、とにかく第一印象が「えっ?バブル期?」と思う位、ネックレスやイヤリング、指輪をジャラジャラとつけて来られた方でした。勿論、派遣社員の方なので特に服装に規程はなく、業務に支障がなければ構わないのですが、その後も割と毎日ジャラジャラと音をさせながら出勤され、そして言動がとにかく「違和感」を感じさせるものを持った方でした。
例えばうちの会社は、社内で使用する切手や印紙を特定の引き出しにて管理しているのですが、その引き出しの場所がその彼女の机の隣にあったのです。ある日私が切手を使う為に彼女の隣まで行き、引き出しの鍵を使って開けた所、彼女が振り向き「何をしていらっしゃるんですか?」と聞いてきたので説明をすると、「ここに切手があるんですね。あの、あなたが切手を取り出す所を見ていてもいいですか?」と言い、自分の業務の手を止めてクルっと椅子を半回転させて私の方へ向き直り、両手を膝に揃えて、私の一挙一動を凝視し始めたのです…。何コレ!怖い!!
又、ある時、半地下の作業場で、私がダンボール箱に挟まれながら支店で使う備品の整理整頓を行っていた所、なんだか背中に視線を感じ振り返ると、またもや彼女がダンボールの隙間から無言でジーっとこちらを見つめているではないですか!そして私と目が合うと「…何をしていらっしゃるんですか?」と。又私が答えると「作業、見ていてもいいですか?」…怖い、怖いよ~~~
彼女は前職は小さな出版会社に勤めていて、経理・人事・庶務等あらゆる業務を一人で回していたという事だったのですが、彼女に仕事を引き継ぎしていた社員の方が「あの人、メールさえも余り出来ないみたい。。」と。そんな事ってあります?
またある時急に私がお昼を食べている来客室に来て、「なんかお腹の具合が悪いんです」と言いながら、コンビニで買ってきたお昼を机に並べ始めたのですが、それが油で炒めたガパオライスとお握り2個!だったんです。
私が「お腹の具合が悪いなら、うどんとかお粥の方が…」と言いかけるも、既にラップ包みを開け、ガッツリ食べ始めたので、それ以上何も言えなくなり。。
気まずい空気に助けを求めて、一緒にお昼を食べていた派遣のSさん、Wさんを見てみたら、二人共知らんぷりでこちらに気づかないフりでおしゃべり!おーい、助けろ~~笑
とにかく一つ一つの言動が予想を上回っている感じで、皆が少しづつ彼女を遠巻きにし始めた頃、彼女に業務の引継ぎを行っていた社員が別部屋で上司に「今まで教えた事もメモは取らないし根本的な事も全然出来ないので、これ以上彼女に仕事は教えられません。」と訴え出したのです。それで上司が彼女の営業担当の人に連絡してみようと言っていた矢先、何か気配を感じたのか急に「具合が悪いので、午後半休取ります」と言って早退し、それっきり二度と出勤する事はありませんでした。
物凄い危険察知能力!
後日、他部署の男性社員さんと話していた時に、「あれ?あの人辞めたの?頭からボヨヨ~ンとスプリングバネが出ている人!」と言ったのですが、本当にそんな感じの変わった方でした。世の中、本当に色んな人がいるんだな、とこれまた実感した出来事でした。
それにしても凝視は怖かったよ、凝視は。
友人となった二人
お次は、今でも定期的に一緒にご飯を食べたりしている女性二人のお話しです。
彼女達は、元々いた女性社員二人がそれぞれ出産・育児休業を取得、又旦那が転勤になり退職する為の補充という事で、派遣社員として入社されて来ました。
一人は経理業務を担当するSさん、もう一人は給与人事を担当するWさんで、当時の私の業務上、Wさんとは必然的に話す機会があり私と違って細かい所にまで気を配る事の出来る彼女とはお互いに情報交換しながら少しづつ仲良くなっていきました。
当時の私は、それまで仲が良かったり、一緒にお昼を食べたりしていた年齢の近かった社員やアルバイトさんが、色々な事情で退職される事が続き、一人でお昼休憩を取る事が多い毎日でした。
とはいえ、私もいい大人なので一人でも音楽を聴いたり本を読んだりしながらそれなりにお昼を過ごしてはいましたが、やはり毎日となると多少寂しい気持ちはあるわけで。。
他の女性社員の方々もとても良い方ばかりなので、こちらから彼女達が主にお昼を食べている大会議室へ出向けばその輪には勿論入れたのですが、いかんせん年齢的に10歳以上離れている方が多く、相手が気を遣うのでは?又、恐らく話しも合わないだろうと思うと中々行動を起こす勇気もなく、毎日一人飯の日々を送っておりました。
けれどそんなある日、ほぼ入社が近かったSさんとWさんは、お互い派遣社員同士で最初から仲良くしていたようですが、その二人が突然「私達と一緒にお昼に行きませんか?」と声をかけてきてくれたのです。いや~、この時は本当に嬉しかったですね。
それをキッカケに、お昼には私が元々お昼休憩をとっている来客室に二人で来るようになり、時には仕事帰りのご飯にも誘ってくれるようになり、二人共色々な会社を渡り歩いているだけあってとても明るくパワーがあり、ちょっと寂しかった毎日から、会社に行くのがとても楽しくなった事を覚えています。
勿論会社は仕事をしに行く所で、どんな状況であれそれに適応していく必要がありますが、一日の大半、家族よりも長い時間を過ごす会社での人間関係は、つまらなく味気ないよりは楽しいに越したことはありませんよね。
彼女達はそれぞれ産休育休要員と、次に社員が決まるまでの補充要員で、いつかは別れが来るという事はわかっていましたが、それでもそれはまだまだ先の話しという事で日々楽しく過ごしていましたが、本当に人生、何がどうなるかはわからないもので、ご本人達の事情により、入社してから一年余りで急に二人共同じ日に退職する事になってしまったのですが、いや~、本当にこの時はショックでしたね。。
気の合う人達がいなくなってしまうのは、やっぱりとても寂しいものです。
最終出勤日の前までに、三人でお別れ会をしましたが、一生懸命考えたそれぞれが気に入ってくれるだろうお礼の品物を手渡した時にはWさんは涙を見せてくれました。そして勿論二人からも送別の品物を頂きました。
最終日のお別れの時も「またご飯でも食べに行こうね」という言葉を交わしてサヨナラをしたのですが、こういう言葉の約8割位はほぼ社交辞令であり、実際に会う事なんてあまりないと思うのですが、それから一年が経った頃、急にSさんからメールが来たのです。
「久しぶり!今度三人でランチにでも行きませんか?」と。
それ以来、一年に二回位は定期的にランチや夕飯を食べに行き、お互いの近況や相談をしあう友人関係となっております。本当に人生出会いと別れの繰り返しですね。
笑顔の魅力
さて先程の二人は社員として転職して来た人達でしたが、我が社には派遣社員さんも随時入社して来ており、今度はその中から印象に残った何人かの方の事を書いてみたいと思います。
まずは今では派遣社員から我が社に契約社員として入社してくれている、40台半ばの女性Kさんです。
彼女がうちの会社に来たのはもう7年程前になりますが、入社前の職場見学で、彼女が人事部長と一緒に社内を見て周っていた時、私の所属する部署にやってきて初めて目と目が合った時。部署の人間10人位から一斉に見つめられ、緊張してガチガチになっていても何ら可笑しくはないその状況で、彼女はとびっきりの笑顔で破顔一笑したのでした。
その笑顔が本当にステキで。あれほど第一印象の良い人に今までの人生で出会った事がない位の笑顔でした。
彼女の事がすっかり大好きになった私でしたが、所属部署が違っていたので業務では余りお話しをする機会もありませんでしたが、休み時間や業務の合間には年齢も近かった事もあり積極的に話しかけるようになり、たまには二人でお昼に外に行ったり、会社帰りに映画を見に行ったりご飯を食べに行ったりするようになりました。
二人で色々な話しをするようになると、沢山の人を魅了してやまない魅力的な笑顔の裏には、自分の思ったことや考えは、反対意見であっても割とストレートに口に出す人であることなど、最初の柔らかい印象とは違う筋の通った一面もありましたが、それ以上に彼女の最大の魅力である、とにかく非常にアクティブで前向きな所、そして業務中でもいつでも、明るい笑顔で楽しそうな笑い声を発している彼女はとにかく事務所の中では向日葵のようで、それこそ誰からも好かれる存在なのでした。
例えば私も、彼女程ではないですが、割と誰とでも分け隔てなく人と接する事が出来ると自分では思っていますが、他部署に、一週間の内殆ど出張に出ていて、週に1度位しか本社に出勤しない嘱託社員の初老の方がいらしたのですが、私が廊下や昼時に社外ですれ違った時に「おはようございます」「お疲れ様です」と挨拶をしても一切無視(気づかなかっただけと信じたいが)される方がいたのです。ただ他の女性社員も同じように話していたので「あぁ私だけじゃないんだ。そういう人なんだ」と思って気にしないようにしていたのですが、ある日、その方が久しぶりに出張から帰ってこられた時、何やら手提げ袋を手に持ち、コピー機の所にいたKさんに走り寄り「これ、お土産!」と万遍の笑顔で話しかけ、手提げ袋を手渡しているのを私は見てしまったのでした。。 ガーン。えっ?あの人って皆にそうじゃないんだ、Kさんには自分から話しかけるんだと。これは結構なショックでしたね。
後でその初老の方の所属部署の女性に聞くと、そのお土産は彼女も貰ってはいたそうだけど、彼女以外に渡したのはKさんのみという事らしく、そんな気難しい人でさえ虜にしてしまう程、彼女は魅力的な女性という事なのでしょう。(言っておきますが。お土産をくれなかったことを恨んでいるんじゃないですよ!自分では特に嫌われるような事をしていないはずなのに、その人からは相手にされなかったという事が悲しかったという事です)
まぁ私もまだまだ人間が出来ていないって事なんでしょうね。
それ程、笑顔というのは人を虜にする力があるんだと本当に思います。彼女からは日々、それを教えて貰っております。
弁護士の女
さて、次に印象に残っているのは、今でも仲良くしている友人の一人となった女性です。転職時、総合職を希望して入社し、仕事に対する意欲に燃えていた彼女ですが、社内事情もあり一般事務と同じ業務を担当して5年、突然「私、弁護士になる」という決意を表明し、退職していきました。
それを聞いた社内の誰もが「そんなの、なれっこないよ!」と思っておりました。
確かに彼女の出身大学は中々の有名校であり、そこの法学部を卒業、又お父様、お兄様も弁護士稼業を営んでいるのは知っていました。
けれど一緒に仕事をした5年余りの彼女の行動を見る限り、私には彼女が「頭がいい」というよりは、「変わり者」という印象の方が強く、それは一緒に働いてきた同じ部署の皆も同じ印象を抱いていたからです。
彼女の変わり者エピソードには事欠かなく、例えば余り落ち着きのない彼女は、仕事が暇な時は席にいられず社内巡回を始め、あちこちの知り合いの部署に顔を出しては「ねぇねぇ、何してんの?」と声かけをしては「し‥仕事に決まってるでしょ!」と怒られたり、又当時社内で使用していた、コピー機を使う為のカードキーというのがあったのですが、どうしたらそうなるのか、そのカードをシュレッダー機で裁断してしまい細切りになった残骸を持って帰って来て始末書を書いたり、朝、更衣室で会うと、左右の靴(靴下じゃなく靴ですよ、靴!)を全く違うものをそれぞれ履いてきていたり。
何より強烈だったのはその性格で、例えば彼女を含めた友人三人で今度〇日に、会社帰りに一緒にご飯を食べに行こうと約束をし、その当日、もう一人の友人と私は約束の時間に、待ち合わせの場所で彼女を待っている訳ですが、30分以上も待てど暮らせど彼女はやって来ない…。しびれを切らして見に行くと彼女は残業をしており、私達を見て開口一番「あれ、まだいたの?約束なんて当日にならないとわかんないんだから来なかったら帰ればいいのに」と言われて二人で茫然とし、喧嘩した事も何度もあります。
そんな印象の強い彼女だったので、皆から「あいつなめてんな。そんな簡単になれるもんじゃない」と言われてはおりましたが、それから3年後、見事に彼女は弁護士試験に通り、晴れて弁護士になったのでした。やっぱり頭は良かったのね~。まぁおっちょこちょいの彼女らしく、本当は2年目に合格していたのですが、書類申請手続きを忘れていたとかなんかでその後丸々一年を棒に振っていました。本当に何やってんの(笑)。
その後、弁護士としての就職活動には多少難航しておりましたが、今は大手企業の法務部に在籍し、あちこちに出張をし、沢山の案件を抱えるキャリアウーマンとして大活躍しているようです。
晴れて弁護士になった後、どうして転職しようと思ったのか聞いてみたのですが、「だって前の会社に入社した時、上司から『君の業務は備品担当だよ。備品というのはボールペンとか…』と聞いた時から転職しようと思ってた。」と言っておりました。
まさに適材適所という事なんでしょうね。備品発注も誰かがやらなければならない立派な業務の一つですが、彼女にとっては物足りず社内をフラフラとするような行動となっていたわけで、今では上司から、次の人事で部長職に、と言われている程だそうです。
いや~人ってやる気次第で本当にどうにでもなるんだなぁ。
ちなみに当時の約束ドタキャンについては「あの頃は本当に非常識だったわ。ごめんよ」と言っておりました。大人になったね(笑)
資格マニア
私も社会に出て働き始めてかれこれ25年以上になりますが、その間、我が会社にも沢山の転職者が入社してきたものです。
皆、一応人事部長、そして役員と厳正なる面接試験を経て入社しているわけですが、本当に色んな人に出会う訳です。
中には入社後良くも悪くも「おやおや?」という方もいました。
あっ、でも私も何度か一次面接に立ち会った事がありますが、いや~人間、たった一回や二回の面接位じゃその人の本当の姿なんてわからないものだとは理解しています。
という事で、沢山の転職者の中から個人的に特に印象に残った人を書いてみたいと思います。
まずはAさん男性。入社当時は39歳位だったでしょうか。彼の一番の特徴はとにかく資格取得マニアだという事です。それは本当に幅広く、様々なジャンルに及んでいました。
例えば彼は会社ではバックオフィスの経理部門の仕事を担当していましたが、日商簿記2級は勿論、FP技能士、宅地建物取引士、電気主任技術者、マイクロソフトオフィススペシャリスト、そして何故かアロマテラピー検定、小型船舶操縦士などなど、私が知っているものだけでも数えきれない程の資格を持っていました。特にガソリンスタンドでは必須資格となる危険物取扱者においては、丙種は勿論、乙種の第1~6種全てを順番に取得していた程です。
ご本人もハッキリ「自分は資格マニア」と言っておられましたが、とにかくありとあらゆる資格を取得することが趣味との事で、たまに私が業務上、机でアルバイトの履歴書を見ていると、通りすがりに資格欄を覗き込み、「あっ、〇〇の資格を持ってる!悔しい、次はこれを取ろう!」と良くわからない熱量で対抗心を燃やす位でした。
でもこれは本当にいい趣味ですよね。様々なジャンルを勉強する事で自分の知識も広がりますし、又実際に資格を取れば履歴書に書く事が出来るので、転職活動の際にも非常に有利にもなります。この時代に普通自動車免許しか持っていない私からすれば、素直に凄いな、エライなと感心しておりました。
ただこれは本人から聞いた話しですが、彼は何回か転職をしているそうですが、宅地建物取引士を取得して暫くした後に、その時勤めていた会社を退職して転職活動をする際、雇用保険の失業給付金の申請をしに職安に出向いた所、担当者より「あなたの場合、給付金は受給出来ない」と言われたそうです。なぜなら宅地建物取引士の資格があれば自分で開業出来るので「失業」状態にならないハズだから、と。
それは確かにそうだけど…いや~厳しいですね。まぁ給付金を出す側からすれば「何のための資格なんじゃ。それを使えば仕事出来るでしょ」という事なんでしょうけど。なので時と場合によっては幾ら良い資格でも書かない方がいい時もあるって事ですね。
又、以前会社にいた人事担当の人からも、余りに沢山の資格を履歴書に記載すると、面接官に良い印象を持たれないとも聞いた事があります。必要な資格であって、それを仕事に生かしているのではなく、本当に単なる「資格マニア」だという事がわかってしまうから、と言っておりました。なるほどねぇ。
とはいえ、履歴書に書いたり書かなかったり選択は自分で出来るわけですから、色々な資格を持っているにこしたことはありませんよね。彼はその資格を武器に、それから5年後にやはり又転職の旅へと旅立って行きましたが。今はどうしているんでしょうか。。
友人が務めるティーネットジャパンという会社は技術者や有資格者が多い会社と聞いているので、Aさんのような沢山資格のある人だと生き生きと仕事ができるかもしれないと思いました。